悪の教典 上・下:レビュー

サイコパスな教師

生徒から慕われていて、学校からもPTAからも評価の高い高校教師の主人公。
教師のかがみともいえる表向きの顔とは別に、他人への共感能力を持ち合わせていない顔があるのです。

生まれながらのサイコパスで、反社会成人額障害という隠された顔がある教師は、自らの目的を達成するために殺人を繰り返していきます。
学校では、いじめやモンスターピアレンツ、セクハラなど様々な問題が取り巻いています。

簡単にいえば、主人公はサイコパスな一面を持つ二重人格の教師です。
殺人小説であり、推理やミステリーなど関係なく、人を殺すことが描かれた内容です。

ある日、ほんのちょっとしたミスを犯してしまい、それを隠すためにクラス全員を抹殺しなければいけなくなってしまいます。
映画化もされていますが、映画ではその極悪な主人公を伊藤英明が演出し、「イメージが崩れた」という声が挙がっています。

面白いというレビュー

上下とも通して読まれた方の中に多いレビューですが、面白いという声がたくさんあります。
主人公の理屈がかなり理不尽で、自分の両親が息子について相談してたら「親の苦悩を解放してあげるのは、慈しみ。愛情。子供としてできる、最後の恩返しだ。」などと言って殺してしまう場面だとか。

少しグロい描写もありますが、主人公のサイコキラーぶりが中々はまります。
客観的に見ると面白いですが、こんなに人は自己中心的な人もいるのかと考えるとリアルですね。

しかも、作者の作風からでしょうか。
すごくリアルな描写が多いのが魅力です。

殺害のシーンはかなり細かい心理描写で描かれています。
セリフ一つ一つにもユーモアがありますし、それによって登場人物のリアリティさが醸し出されています。

結末はかなり理不尽です。
だからこそ心に残るのかもしれません。
序盤は被害者自身が伏線を引いていて仕方がないかなとも思いますが、後半は無実の被害者が続出します。

作品として最後までぶれていないところも作風の一つ。
サスペンス、ミステリー、そして最後にさわやかな展開を求めていないかたにはぜひおすすめしたい作品だという声が挙がっています。

面白いけど物足りない

ミステリアスな雰囲気があるものの、最初から「殺人鬼だ」とわかっているので、ミステリー要素は内容にはありません。
犯人が殺人を行う動機は、殺人が目的ではなく自分の邪魔となる要因を排除するという設定ですが、主人公の感情が著しく欠損しているのでちょっとのめり込みにくい部分も。

頭が良く、他の一般人を虫を殺すようなものだと思っています。
だからこそ、あっさりと行動に移すのでぞっとします。

表向きと裏の顔とのギャップが激しすぎて、ついていけないという声も。
過去に放送禁止となった「バトル・ロワイヤル」と少し似ているところがありますが、そういったグロい描写が嫌いな方には、おすすめできない作品です。