永遠の0:レビュー

必ず生きて帰る

主人公の男は、司法試験に不合格してしまい、落胆しています。
そのなかで、出版社で働いている姉といっしょに、祖父の知人に会いながら実の祖父の話を聞いて回るのがこの話の大筋です。
実の祖父という言い方についても、現在の祖父は血がつながっていないためです。

実の祖父は、第二次世界大戦で戦死した海軍の特攻兵でした。
祖父の評判はさまざまで、多くの人は「祖父は臆病ものである」とののしるような言葉もありました。
しかし、その一方で「祖父は天才パイロットだった」という呼び声もあったのです。

祖父には、結婚している女性がいました。
その女性と「必ず生きて帰る」という約束を交わして、それを守るために必死に戦っていました。

戦死は、当時の日本では美徳とされており、祖父のような考え方はかなり異色でありました。
なぜ、祖父は死を選ばずに生き延びようとしていながら、特攻を志願したのか、そして、なぜ生き延びようと思ったのか。

家族のため、友人のため、そしてこの国のため。
いろいろな考えが取り巻く当時の日本を描いた人間像の映画です。

勇気は一瞬、記憶は永遠

そんな感想を残しているレビューがありました。
特攻隊は「ニューヨークの貿易センタービルに突っ込んだ人と同じ」です。
ですが、永遠の0での特攻隊はそのようには書かれていません。

「ゼロ」という数字には2つの意味があります。
まず一つ目は、「1つもない」という意味です。

0に何をかけても答えは0です。
ですが、ゼロには別の解釈もあります。

「かなり少ないけどないわけではない」という意味です。
ゼロは、1よりは小さいけれどもないわけではないという意味も持っています。

「永遠の0」は、そんな、永遠に残るような小さいけれどもないわけではない何かがある。
それが「記憶」なのだと考えられます。

生きて帰ることに執着していた主人公が、なぜ特攻を志願したのか。
命令されたから、国の名誉だから、それとも・・・。

疑問が残る小説でもあり、すっきりされた方はその人なりの解釈を持っています。
様々なレビューが飛び交う作品です。

疑問を持っている方は多い

戦争の記憶はとっくに風化しています。
今では、戦後に国民が大変だったことさえも忘れられている世の中です。

永遠の0は、少し次元が違うというレビューもあります。
日本はすごい、日本は頑張ったと述べる作品に疑問を感じている方が大勢います。

少し「美化しすぎ」たのではないかという声も。
これはやはり賛否両論ありますが、永遠の0は「色んな戦記物のカッコいいシーンを繋ぎ合わせたもの」だと述べる方もいます。

日本人は、もう少し戦争について昔に近い考えを持つべきなのかもしれません。
ですが、好き嫌いがはっきりと分かれる作品です。

また、永遠の0は参考文献とした資料を見ると、事実誤認のあるものがまざっていると指摘されています。
忠実に再現した作品ではなく、その粗さが批判されているだけなので作品としては問題ない出来です。

戦争について中途半端に理解していると、この作品を読んでも面白くありません。
そこで、「何も知らない」ことを前提として読まれることをおすすめします。
そんな気持ちになって読めば、読んだ後にはスッキリとした気持ちになれるでしょう。