『湊かなえ』(みなとかなえ)

あの映画の原作

湊かなえさんは日本の小説家ですが、名前こそ知らない人が多いのかもしれません。
代表作を聞けばだれもがうなずくかもしれませんが、「告白」は映画化もされたベストセラー作品です。

彼女の素晴らしいところは、「どんな脇役でも履歴書を作ること」です。
履歴書があれば、後は勝手にその役を演じてくれるというのです。
だからこそ、一人一人の登場人物に重みがあり、「告白」のような深い作品が出来上がるのでしょう。

彼女の作品によって生まれた「イヤミス」という流行語があります。
これは、「読んだ後に嫌な気分になるミステリー作品」だということです。
どうして「イヤミス」なのか?

彼女の作風は、あまりにも救いがなく残酷な展開へとどんどん突き進んでいくかのようなものが多いのです。
「告白」が良い例ですが、読んだ後に嫌な気分になってしまう、でも、中毒性がある作風です。

人はだれでも結局は「噂話」が好きですから、聞いていて、読んでいて嫌な気分になってしまうものでも、ミステリーだからこそ読めるという意味合いも兼ねているのかもしれませんね。
一言で表すとしたら、「ブラックミステリー小説」です。

湊かなえの代表作品

やはり代表作といえば、「告白」です。
告白は、娘を殺された中学教師の告白から始まり、更に事件に直接的にかかわっている生徒の告白、間接的にかかわった者の告白によって6章にわたる長編小説です。

「告白」はかなりのブラックミステリー小説です。
読んだ後に、さわやかな気分になることはありません。
ですが、深く、印象強く、鳥肌がたつような作品です。

他にも「少女」という作品があります。
女子高生の一夏の冒険物語ですが、告白と同じようにブラックなストーリーです。
あらすじにも書いてありますが、少女は「人が死ぬところを見たい」という内容です。

「告白」と「少女」を比べるとしたら、「少女」はとてもシュールです。
よりミステリアスに近い展開で、先に読むのであれば「少女」が楽しめるかと思います。

たった1日のことを描いている「高校入試」も中々のスリリングな展開へと進んでいく作品です。
受験生の思い、教師の思い、犯人はだれなのか?
たった1日のことなのに、その1日がかなり長く思えてしまいます。

読み始めると早く読み終えたくて仕方がなくなる。
そんな湊かなえの作風にはまってしまった方は多いのではないでしょうか。

作者の生い立ち

湊かなえさんは、1973年生まれ。
広島県に生まれ、現在は兵庫県淡路島に在住しています。

子供の頃から空想好きな少女でした。
小中学校の図書室では江戸川乱歩や赤川次郎の作品に没頭したそうです。

武庫川女子大学を卒業した後、アパレルメーカーに就職。
青年海外協力隊の隊員としてトンガに2年間ついています。

更に、淡路島の高校で家庭科の非常勤講師となり、結婚後には形に残せるものに挑戦したいと創作を始めました。
かなり激しい人生を送っていますが、現在は昼は主婦業をこなして朝晩は執筆に励んでいるそうです。

2007年に刊行した「聖職者」は第29回小説推理新人賞を受賞しました。
この年が、湊かなえの小説家デビューとなった年です。

連作集の「告白」は2009年第6回本屋大賞を受賞して、デビュー作でのノミネートは共に史上初でした。
「告白」は湊かなえの代表作でもありますが、この時本人は当時のインタビューで、5年後に目指す姿を語っています。
まず、作家であり続けることと「告白」が代表作でないようにしたいと話しています。

「告白」は2010年に松たか子主演で映画化されました。
書籍の売上は累計300万部を超えるベストセラーとなり、やはり「告白」が彼女の代表作だといっても過言ではないようになりました。